脚光をあびる高エネルギービームによる非破壊検査

EUの海上輸送貿易は貨物量にして年間38億トンにものぼる。しかし最近ではコンテナに紛れた密輸も増大し、特に爆発物の密輸入が欧州諸国の安全を脅かすとして緊急の問題になっている。そのためコンテナ中に存在する違法物質、放射性物質、武器、化学兵器物質などを、検出する新しい非破壊検査技術が開発されている。

 

増大する透視技術の高度化ニーズ

背景には増大する一方の貨物に港湾税関の検査官が対応仕切れなくなったこともある。開発はEU予算(C-BOARDプロジェクト)に基づいてフランスの原子力・代替エネルギー庁(注1)が担当した。化学的分析による物質特定には、それぞれ特定の物質にチューンされたマルチセンサーで微量の揮発した物質を同時に高感度に分析する。

(注1)正式名称はCommissariat à l'énergie atomique et aux énergies alternatives

(CEA)、職員数約15,000人。原子力の開発応用を行う政府機関で2010年からは原子力・新エネルギー庁となった。

次に通常のX線透視で問題がある場合には、中性子線透視を行う。さらに重原子が高エネルギーγ線を吸収して核分裂を起こす光核分裂(注2)で核物質を検出する。

(注2)高エネルギーγ線を吸収した後、核分裂で質量が等しい2個に分裂する現象で、最近核物質の形状計測のため基礎研究を含む研究が活発化している。実際には下の図のように遅れて放出される中性子を計測するので、検査装置は電子銃とターゲットのγ線源と中性子時間分解計測系になる。

 

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Credit: irfu.cea.fr

 

EUは国際間が90%、EU内でも40%を海上輸送に頼っており、中心的な港であるロッテルダム、グダニスクで2018年までに新検査システムの試験が予定されている。

加速器技術が社会の安全性に寄与しなければならなくなったことは残念なことだが、加速器科学がこれまで実用化した民生技術は数え切れない。CEAは主に使用済み核燃料容器の非破壊検査用に大学や研究所とさして変わらない研究環境で装置を開発していた。今回の応用は緊急性が高いEU予算で本格的に実用化を目指して取り組む。コンパクト電子銃と直線加速器、2D中性子検出器の要素技術があれば開発できるこのシステムは福島第一の燃料デブリの計測にも使えるのではないだろうか。いずれにしてもCEAは主に使用済み核燃料容器の非破壊検査用に興味を示していたが、いざというときに基礎科学の蓄えが役に立つ。

 

 

 

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