泡状ニッケル上の鉄系高性能触媒で実用化に近づく水分解反応

水素を水分解で製造できれば燃料電池で電力が得られる。実用的には大量に水素を製造するには電力を逆に使用しなければならないパラドックスに陥るとする意見もあるが、再生可能エネルギーというものは多岐にわたりエネルギー源を分散してそれらを足し合わせて(ウサギと亀のレースのように)地道な努力が本質的で、逆にそのことがリスクを低減し、安定でクリーンなエネルギー供給につながるのである。この鉄則を無視して短期的政策に走ると初期投資がユーザー負担となって跳ね返るなどの副作用で苦しむことになる(スペイン、ドイツなど)。

 

水素は理想的な再生可能エネルギー

水分解触媒は電力で水分解をするために重要であるばかりでなく光触媒のように太陽エネルギーで直接的に水素を製造するためのキーテクノロジーとなる。水分解触媒のエネルギー変換効率が上がれば無尽蔵の水素エネルギーを貯蔵し必要な時に電力に変換して使えるからである。

水素と酸素発生反応が同時に進行する水分解反応には、実用的な酸素発生に少なくとも過電圧(注1)300mV以下で、電流密度500mA/cm2が必要条件となる。ハーバード大学の研究グループは泡状のニッケル上に成長したリン酸化鉄が酸素発生反応の高性能触媒となることを見出した。

今回の研究結果は2015年にオーストラリアの研究グループが発見していた酸素発生触媒系の改良版で、より高性能となる。

(注1)水の電気分解の理論電圧は1.229V。実際には反応の活性化エネルギーなどで、過電圧と呼ばれる過剰電圧を印加する必要がある。

新型触媒は過電圧177mVの電流密度10mA/cm2、265mVで500mA/cm2、300mVでは1,705mA/cm2と目標性能を遥かに上回る性能を持ち、1MKOH電解質中で10,000のサイクルでも劣化がない。この性能は現在最高とされている高価なIrO2触媒に比べても49倍、高効率となる(PNAS May 15 (2017))。

燃料電池の説明は省略するが発電後に燃料の水素は水に戻されるので、水分解で水素として貯蔵された化学エネルギーを取り出した後に原料の水を回収できるので究極の再生可能エネルギーといえる点や、太陽光や風力発電では時間変動があるため送電網に組み込むには蓄電システムと併用する必要があるのに対して水素としてエネルギーを貯蔵することができる点が優れている。これまで大量の水素製造が熱分解や電気分解によるため、大規模な電力源を必要とする点が欠点とされていた。

 

水素発生はすでに効率100%

イスラエルの研究チームはプラチナを先端に置くCdSe・CdS複合ナノロッドでOH-のラジカル化とプロトンの還元を組み合わせることで可視光による水素発生効率100%を実現した。水分解の研究の課題は水分子を酸素とプロトンに分解する酸化プロセスが中心となっていたが、今回の新型触媒はまさにその酸素発生分解触媒の開発にあたる。

今回の新型触媒による酸素反応の効率化や効率100%の水素発生光触媒(Nano Lett. 16 (2016) 1776)で水素エネルギーの利用に大きな弾みがつくものと期待される。原子力(核融合)と再生可能エネルギーはウサギとカメの競争のようなものだが、ウサギが休んでいる間にカメの努力で逆転もあり得る展開になってきた。なお今回の触媒の基板となるのは市販されている泡状ニッケルで、リン酸化鉄(Fe(PO3)2/Ni2P)の製造コストは低く、実用化に貴金属触媒につきもののコストの壁はない。

 

 

 

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