超臨界水で地熱発電は10倍熱効率が上がる

地熱発電は再生可能エネルギー源として最も地味な存在だが、これまでの考え方では火山国のアドバンテージがあるものの、水蒸気や熱水を組み上げてタービンを回す地熱発電の最大問題は熱源が1,000-3,000kmとなる(注1)ため、温泉水とバッテイングするとして、環境破壊と見なされること。

 

(注1)熱水としての分布で地下深部(マグマ)の熱源を利用するマグマ発電はその限りではない。国内では3km以上の深部に達する地熱発電所も存在するが例外的である。

 

超臨界状態

ところが地下深部で水は超臨界状態になっていることを、これまで考慮していなかった。つまり温泉と競合する1,000mまでの地下から温泉水同様の熱水あるいは水蒸気を汲み上げて来たところに問題があった。

超臨界状態というのは相図に整合しない物質の状態で、地下深部の水の場合では気体(水蒸気)であるはずの温度で水と異なる流体状態を指す。超臨界水は室温の水の0.03-0.4倍と、軽い流体で粘性は気体と同程度なので移送しやすい。この超臨界水は高温・高圧下で別の状態(亜臨界水2)となる。

ただし超臨界水は酸化力が強く貴金属でも腐食させるのが難点。一方亜臨界水はそのような問題がないので、一部の火力発電に使われている。

 

話をマグマ発電に戻すと、電力中研でも勢力的に研究開発が行われており、国内でもベースロード電源を目指した日本マグマ発電株式会社が名古屋大と協力して、長野県王滝村で実証実験を行っている。

実はこのマグマ発電は超臨界状態の水を用いることで、従来のものより10倍高効率にすることができるとして、最新の研究開発が日本と同じ火山国であるアイスランドで進行していることはあまり知られていない。温泉とバッテイングするからやめる、のではなくバッテイングする深さを避けてそれより深い地下にある超臨界水(正確には超臨界流体、下図参照)を利用するというアイデアは興味深い(Nature Comm. 6, 7837 (2015)。温泉と地熱発電が地下にある熱源を共有しても枯渇することはないのである。

 

photo data 01 02 copy

Credit: itec-es

 

アイスランドの先進技術

アイスランドは地熱利用で先駆的なプロジェクトを推進している。一つはCO2を地下の岩石に吸収させて地下に閉じ込めるCarbfixプロジェクト。アイスランドのヘリシェイデイ発電所はCO2を石に変えて地球に戻す計画に取り組んでいる。世界初となるCO2を岩石に変換する試でみは、CO2を玄武岩に吸収させてから硬い岩石に変成するが、予想以上にその速度が速いことがわかった。地下熱発電所では不純物であるCO2をフイルターのアミンで取り込むがその後、昇温してガスに戻して低温で液体にして地中に戻すが、そのCO2が漏れて大気に放出される危険性がある。またこのプロセスにはエネルギー(電力)が必要である。CO2を石に変えてから地中に戻す方法ではこの危険性がないし電力も少なくて済む。

 

もうひとつはマグマ発電のIDDP(Iceland Deep Drilling Project)である。IDDPは地下深部まで掘削して、高温水蒸気を使って高効率の発電を行う国家プロジェクト。IDDPは当初5,000m掘削を目標としていたが、2,000m付近でマグマ溜りに到達し、その井戸を発電に利用する開発を進めて来た(Geothermics 49, 1, Jan. 2014)。

この井戸はIDDP-1として世界初のマグマ発電事業の実証発電所となったが、最近さらに深い4,700mの深部では高温・高圧の環境下で水が超臨界状態とpなっていて、それを利用すると効率が10倍高くなることを見つけた。組み上げるには亜臨界水とした方が金属チューブでの移送に適しているが、地下に眠る無尽蔵の熱エネルギーを利用する糸口になるとして注目を集めている。

2016年8月から開始された掘削は2017年1月に4,659mに達し、超臨界水を得た(Phys.org. May 5, 2017)。

 

ncomms8837-f3

Credit: Nature Comm.

 

地熱利用で先端に立つアイスランド

リーマンショックで銀行が破綻し刑事的にはどん底にあったアイスランドだが、銀行を破綻させて復活し、どちらも火山の恩恵である観光と自然エネルギー利用で存在感を示している。日本でも地熱発電の効率が10倍に高まるとしたらベース電源の議論の風向きも変わるかもしれない。その秘密が超臨界水というありふれた物資の異なる状態にあるとしたら、「灯台もと暗し」である。

温泉業者の方々に納得してもらって、マグマ発電に未来を託しても良い時代が来たのかもしれない。

 

 

You have no rights to post comments

Login

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.