原発避難者訴訟で国側が敗訴〜国際訴訟に与える影響

原発と国際訴訟というとつながりがないように思えるかもしれない。しかし福島第一の訴訟は国内の問題ではない。国際的な訴訟に発展しているからである。

 

東京電力福島第1原発事故で群馬県に避難した住民らが東電と国に損害賠償を求めた訴訟で、前橋地裁が3月17日に、東電と国に賠償支払いを命じる判決を下した。原発事故全国弁護団連絡会によると、同様の集団訴訟は全国20地裁・支部で約12,000人が起こしている。

 

このことは海外向けメデイアでも大きく報道されているが、今後の国内の訴訟問題の行方を暗示させるばかりではない。国際訴訟への影響が懸念される。外国で真剣に取り上げられるのもそのためである。国際訴訟に負ければ日本が海外からの巨額の賠償を負わされるリスクが増大したということである。

これには日本独特の不安材料がある。日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあるからだ。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためである。 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、IAEAが採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」など三つある。日本は米国から加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた(毎日新聞)。

 

すでに米軍の救助活動の際に被爆した軍人が集団訴訟を起こしているが、遠く離れた北米太平洋岸の漁民たちが、海流に乗って運ばれてきた放射性物質で漁業の収穫に被害を受けたとして訴訟の動きを見せている。ありもない被害で訴訟したとしても、有能な弁護士で裁判に勝つことは十分に予想できる。そうした国際訴訟の賠償問題で国は廃炉費用20兆円に匹敵する費用を支払う義務が生じるとした意見もある。

海洋汚染については実害は規制値以下であっても法外な賠償を請求される可能性があることを念じておかなければならない。タカタのエアバッグどころのスケールではない。

 

海洋汚染を放置する国という汚名以上にそうなれば財政負担で身動きが取れなくなるかもしれない。一刻も早く法整備が必要であるが国際法の専門家を育成して備える必要があるだろう。ワカサギ式ロボット調査は成果をもたらしたが、まだ将来が見通せない廃炉はチェルノブイリ式安全シェルターで封印し、汚染水の処置と賠償問題の決着を最優先課題とすべきかもしれない。

難しい問題であることはわかっている。しかし国際訴訟の問題は今回の前橋地裁で国が敗訴したことは、原告側の有利になる材料となったことは事実である。悔やんでも悔やみきれない事故であったが、これから先の訴訟問題リスクを最小に抑えるリスクマネージメントが急がれる。

国際訴訟問題はもはや1企業の責任で処理しきれる問題ではない。原発輸出してもメーカーが事故賠償責任を負わされるかもしれない。そのことも含めた「発電コスト」の議論をしなければ意味がない。

 

 

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