核汚染歴を持つノルウエイ原子炉に疑惑の目

2017年1月にノルウエイのスヴァンホフトの地面で通常より高濃度の放射性核種が検出され、スペインの上空の大気からも微量の放射性核種が検出されている。その後、フランスの原子力安全機関IRSNが2017年2月13日に微量の放射性核種I131を検出した。 ヨウ素微粒子の計測値は0.31μBq/m3で、気体のヨウ素と合わせた数値1.5μB/m3は健康被害のでるレベルではない。しかしI131が半減期8日と短いので新しい核反応を示唆している。IRSNは欧州の核種監視網を使って監視を強化する一方、米国も大気調査機を欧州に派遣して汚染の調査を行なっている。

  

ハルデン原子炉の漏洩事故

ノルウエイ原子力(NRPA)は2016年10月25日にハルデン原子炉(注1)が事故を起こしI131を放出したことを公表し、管理組織(Institute for Energy Technology)への原子炉の運転許可を取り消した

(注1)ハルデン原子炉は出力25MWhの小型原子炉で、世界各国から原子力工学の研究者が集まり研究開発が活発に行われている。ノルウエイは原子力発電国ではない。小型で商業発電でないため原子炉の管理が甘いとの批判もある。

 

この時には原子炉建屋内で原子炉容器から放射能が漏洩し、10月24日午後1時45分に換気システムを通じて大気中にI131が放出された。しかし漏洩の報告が規制当局になされたのは翌日の朝になってからだった。そのため当局は25日に原子炉を調査したがその時点で漏洩は止まらず放射性ヨウ素の放出が続いていた。外部への漏洩を防ぐため換気システムを停止させたが、手順を間違えたっため圧力が上がり(注2)一部の原子炉水冷バルブが閉となった。

(注2)換気システムを停止と同時にバルブ類を開閉する空気圧を下げることをしなかったことが原因で、操作用の空気圧力が増大した。

その後、規制当局は放射線計測を行い原子炉管理組織に原子炉水冷システムの確認をさせたが、11月1日に原子炉管理組織は原子炉は正常な状態にあると報告した。規制当局にその後、提出された書類には原子炉が「極めて特殊な状況下にある」と記述されていた。

 

実際に起きたことは以下の通りである。空気圧が冷却水の循環が不安定となり原子炉容器炉心の中性子線が増大したが、これは水素の発生を示唆している。そのため原子炉側は水素を逃がすため再び換気システムのバルブを開ける申請を行った。換気システムが運転されたためにヨウ素が再び外部に放出された。規制当局への連絡が遅らせたことと換気システムの閉鎖にあたり適切な処置を怠ったことが昨年の漏洩事故原因である。

JPARCの事故でも換気システムで放射能が外部に漏れたことが問題になった。事故を隠そうとする体質は世界共通のようだ。換気システムを稼働するためのチェックリストを事前に作り手順に沿って作業するべきである。また換気システムの出口にフイルター設置が望ましい。福島の事故のドライベントでもフイルターがあれば、周囲の汚染を減らせたであろう。安全系はコストの関係で採用されないことが多いが、事故を起こせば賠償や除染費用で比較にならない出費となる。

 

他にもあるハルデン原子炉以外の汚染源

ハルデン原子炉の不祥事は今回の放射性ヨウ素の検出と関係があるのだろうか。現時点で直接的な証拠はないが、前歴や位置関係からすると疑惑の目を向けられても仕方がない。原子炉事故を一度でも起こせば何かあるたびに疑惑の目で見られるのである。しかし北海にはロシアの原子力潜水艦が沈没し(注3)原子炉区画がまたロシアの核廃棄物の集積場(注4)もあるので漏洩の可能性のある施設は多い。

(注3)ロシア北方艦隊の原潜クルスク(K-141)2000年8月12日にバレンツ海で事故により沈没、2001年に引き上げられ原子炉から核燃料が取り出されたのち、サイダ湾に原子炉区画が浮かべられている。

(注4)サイダ湾は50基以上の原子炉区画が浮かぶ原潜の墓場になっている。

EU圏内にある原子炉に適用する(EU)統一安全基準が検討されているが、イタリア、フランスでは安全審査のやり直しや一部の原子炉の運転中止に追い込まれているところもある。欧州の環境NGOベローナ(Bellona)はハルデン原子炉のずさんな管理やサイダ湾の原子炉区画からの漏洩のリスクを指摘するなど、欧州の核汚染について警戒を強めている。

欧州で検出されたI131の汚染源は不明のままである。しかしハルデン原子炉やサイダ湾の解体された原潜の原子炉区画などは疑わしい候補の一つである。

 

 

 

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