福島廃炉ついての基本的な考察

 

福島第一原子炉の廃炉費用が当初の経産省試算(注1)が廃炉費用の他にも賠償、除染、中間貯蔵施設の項目があり総計は21.5兆円(表1)となった。「廃炉費用負担のあり方について」という経済産業省資料参照。

 

廃炉試算は8兆円

1-4号機は廃炉会計(注2)で減損処理(特別損失9,000億円)は電気料金に含めないことになった。福島廃炉計画では水位の高い3号機の燃料取り出しを2017年度開始、1号機、2号機のデブリ取り出し開始を2020年度としている。

(注1)2016年12月9日に公表された。当初の廃炉費用はスリーマイルアイランドの廃炉費用に出力比を乗じたものなので参考程度にしかならない。8兆円という廃炉費用は原子力損害賠償・廃炉等支援機構の試算に基づくもの。

(注2)2013年度に創設された会計制度。

(表1)福島第一原発事故の対処に必要な費用
金額(兆円)  負担
廃炉      8.0    東電
賠償      7.9    東電と大手電力、原発を持たない新電力
除染      4.0    国が保有する東電株の売却
中間貯蔵施設  1.6    税金
総計      21.5

出典:ニュースソクラ

 

経産省の公表した廃炉試算に対応して、国は東電向けの無利子融資枠を現在の9兆円から13兆5000億円に引き上げる他、廃炉費用を積み立てて管理する基金をつくり、長期に及ぶ廃炉と賠償に備えるとしている。これは後述するようにOECD、NEA(Nuclear Energy Association)の廃炉指針である「核施設の廃棄に関する財源確保」(Financing the Decomissioning of Nuclear Facilities)にも明記されている(ただしNEAは廃炉前の運転期間に基金を作るのが望ましいとしている)。

 

NEAの廃炉指針

そのためOECDのNEAは「核施設の廃棄に関する財源確保」で廃炉費用について指針を示している。

もちろん廃炉費用の見積もりは個々の原子炉の置かれている状況に強く依存するので、一般的な議論は意味が薄いが指針では少なくとも廃炉という世代を超えた事業を始めるに際しての心構えが明快に書かれている。

詳細は上記のNEA資料を読んでもらうことにして、ここでは最も基本的なことを引用して我々がこれから始める長い廃炉作業の取り組み方についてのみ紹介したい。

(1) 廃炉の期間は長いので世代間にまたがることになる。その将来の世代の負担を関与することができない現世代が決める、ことになる。

(2) 核施設(原子炉)を運用する組織(電力会社)は所管する原子炉の廃炉に必要な財源の一部を閉鎖時までに確保しておくこと。ここで財源の一部とは原文では寄与(Contribution)となっているので、全額負担とは読めないが、とにかく運転期間中に利潤の一部を基金として積み立てておくべきと解釈できるだろう。

(3) 廃炉費用(の一部)の算出に際しては寿命と運転計画に沿ったもので廃炉計画の一部として(最初から)計画されるべきものである。

(4) 廃炉費用は定期的に物価上昇や技術進歩などを取り入れられるように定期的に見直されるべきである。

(5) 廃炉を目的として積み立てられた財源は廃炉の目的のみに使用されなければならない。

(6) 当初の運転計画に変更があった時は法的及び管理面で必要な措置で対処できる。

 

廃炉の一般的な手順

廃炉の一般的な(損傷を受けていない)手順とはどのようなものなのか。おおまかなステップは以下の3プロセスである。

(1) 使用済核燃料の取り出しと輸送・貯蔵

(2) 解体のための原子炉周辺の除染

(3) 建物内部・建物本体の解体・除去

このうち(1)の核燃料取り出しが最初のプロセスであると同時に、もっとも技術的難易度が高い。廃炉予算の重点的な配備が望ましい。福島第一での問題点は以下にまとめられる。①福島第一では核燃料デブリの所在がつかめていないこと。調査が始また段階で開発方針の見直しが必要。②次に実績のある冠水法は圧力容器と配管に穴が空いているので適用は困難。また水漏れ補修も困難なので冠水法以外の取り出し方法の検討が始まっている。

なお静岡県浜岡原発の1、2号機の廃炉費用の見積額は1号機379億円、2号機462億円で合計841億円とされる。福島第一の廃炉費用の見積もりは(汚染水対策も含めて)8兆円となったが当初の見積額(2兆円)は一般的な廃炉の想定に対応する額で意味はない。

 

厳しい現実

少なくとも調査が済むまでは①廃炉を40年で完了させる、②2017年夏までにデブリ取り出しの最終決定を行うという縛りを外してはどうだろう。信頼できる情報を得ることが先決で、たとえ10年かかっても状況がわかれば手順を決められる。なおNEAの廃炉指針には「廃炉費用のための資金は他の目的に流用すべきでない」とあるのは、廃炉を名目にした予算の流用を戒めているのかもしれない。支援機構の予算が膨れ上がっても結局は国税と電気料金の二重の負担が我々にのしかかる。

また調査方法や廃炉手順にしてもプランA、B、Cの3つぐらいの筋道を考えておいて、次のカードを切れるような体制であってほしい。それぞれのプランもさらに競合させて最善の策を講じることはいうまでもない。

先の世代に先送りされる負の遺産を許容範囲にとどめる一方で、国税と電力料金に反映される電力会社の負担のバランスをどうとるか、正念場を迎える2017年になりそうだが、これに成功すれば最も厳しい条件下での世界に誇れる廃炉技術が残るのではないか。

 

 

 

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