格納容器(PCV)内部調査ロボットの試練

東電は1〜3号機格納容器(PCV)の内部調査のためにIRID参加の組合企業が一連の調査ロボットを開発して、2号機の調査を開始したが、2月16日に東芝製のサソリ型調査ロボットを投入した。

  

格納容器(PCV)内部調査ロボット

このロボットはTVカメラと線量計と温度計を備えたクローラタイプで作業用の足場(グレーチング)の上を走行し、画像、線量、温度データを送信するためのものである。約1年目に改良作業が終了している。

走行時には直線上になって、展開するとサソリのようにTVカメラを前方に向ける「形状変化」ロボットの一種である。

開発期間5年、3億円を投入して開発されたサソリ型ロボットは、投入後、足場(グレーチング)に到達する前に2-3m進んだところでクローラ(注1)が動かなくなり回収困難で調査作業は打ち切られた。前回、定性的に650Sv/hが計測された地点での放射線量は210Sv/hであることが確認された以外は目立った成果はなかった。

画像ノイズで見積もられた530Sv/hはのちに650Sv/h(30%誤差)と訂正されたが、線量計を取り付けてみると210Sv/hであった。つまり30%でなく3倍もの誤差の数値を公表した東電広報によって、海外報道では軒並み650Sv/hの数値が一人歩きした。数値を発表する際には注意しないと誤解を招く。後の祭りだが線量計の測定前に数値を発表することは避けるべきだった。

(注1)クローラには金属キャタピラーでなくグレーチング金属との相性を考えて滑りにくいゴムを使用したため、破片を挟み込んだとされる。異物を圧空で除去する機構をつけるかあるいは表面にゴム被覆した金属キャタピラーを用いたタイプも製作しておけなかったのだろうか。想定に従って仕様を決定し委託された企業は忠実に仕様に従って製作しただろうから、問題は想定の甘さにあり企業の技術力の限界ではないと筆者は考えている。

ロボット調査結果の意味

スタックしてロボットが回収できずに終わった格納容器調査は(東電の否定にも関わらず)海外のメデイアを中心に、「ロボット調査失敗」として報道された。東電は「失敗ではない」ことを強調するが、調査成否より今回の結果を廃炉の手順変更にどのように反映させるのかの方が重要である。

これまで開発された廃炉調査ロボットが1号機から3号機までか異なるデブリ状態に対応するため、それぞれに適応させる必要があったことで、同時並行開発を余儀なくされた。そのため個別に割り振られた予算内で想定された条件に対応する仕様となったと考えられるが、結果的には格納容器内部の状況の想定に大きな誤りがあったことになる。

情報量が圧倒的に不足しているためデブリ取り出し手順の変更さえ困難になるだろう。また圧力容器からデブリが漏れ出さなかったスリーマイルアイランドを参考にしている廃炉手順は見直さざるを得ない。今回の調査ではっきりしたことが一つある。それは日本が世界に先駆けて最も過酷な廃炉手法の開発を独自に行わなければならないという現実である。

 

柔軟な廃炉手法とスケジュール変更が 必要に

40年というスケジュール(と予算)に縛られれば、ロボット設計をやり直している時間がない。2017年夏までに決めるとしたデブリ取り出しの手順変更には格納容器底部の状況把握が必要となるので、少なくとも調査ロボットの仕様変更と改良作業してから再調査するか判断に迫られるだろう。さらにスリーマイルアイランドの手法(冠水法)は圧力容器の水漏れで到底実現は困難だし、例えできてもデブリが容器底にまとまっていなければ、予定にあるようにクレーンでつりあげる方式は使えない。

結局、今回のロボット調査は福島に適応した廃炉手順を練り直す必要があることを教えてくれたという意味では確かに一歩踏み出せた。40年の縛り、2017年のデブリ取り出し決定という縛りを外し、独自の手順を編み出すきっかけけになったのではないだろうか。デブリは赤外線と電離放射線を放出しているので、原理的には場所を特定することは不可能ではない。特に高エネルギーγ線を放出する物体(デブリ)の場所の特定には高エネルギー加速器実験の検出方法が使えるので、ミューオン以外にもデブリ3Dマッピングは可能なのではないだろうか。

これまでの「想定」を外して向き合話なければならないが、従来の財団からの委託という形式にとらわれる必要はない。企業の技術やポテンシャルを十分活用し開発した技術が企業にとってもメリットのある新しい仕組みを考えてはどうだろうか。そろそろ日本も米国のように原子力事業を統括するエネルギー省をつくることも視野に入れる必要があるのかもしれない。

 

 

 

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