ペロヴスカイトは太陽光パネルの救世主になれるか

太陽光パネルのコスト低下は世界的な傾向だが日本の導入コストは周辺機器のコストを含めると、少し事情が異なる。また相次ぐ太陽光発電事業者の倒産などもあり、太陽光パネルは失敗だと言い切る見方さえある。福島事故を契機に脱原発を掲げたドイツも電力料金の高騰で国民の負担となり、米国も大手太陽光パネルメーカーが倒産するなど、原発を再生可能エネルギーで置き換えることは容易ではない印象だが、一方では70年代から建設された原子炉が老朽化し廃炉の負担が国税と電気料金に上乗せされ、国民に二重の負担となりつつある。こうなるとエネルギー供給は八方塞がりに見えるかもしれない。

  

ベース電源の議論はもう古い

しかし再生可能エネルギーの本質的な弱点であった安定性の問題はバッテリー技術の進歩で蓄電コストが低下する見込みが立っている。Liイオンバッテリーとレドックス・フロー電池による蓄電システムが太陽光、風力発電と一緒に電力網に組み込んだベース電源の分散化が現実味を帯びてきた。エネルギー密度で優位に立つLiイオンバッテリーにはまだ寿命(充放電サイクル)の課題が残るが、レドックス・フロー電池は充放電サイクルの容量低下が0.01%の新型が開発され、長寿命で蓄電コスト1kWあたり約1万円が期待できる。さらに水素としてエネルギーを貯蔵する燃料電池が水素インフラの普及次第では、電力網に組み込めるようになると、電源の多様化・分散化を前提としたスマート電力網の時代が現実となる日も遠くないかもしれない。

 

太陽光パネルのコストの推移

米国の環境は日本と大きく異なるので、欧州を基準とした最新の太陽光パネルのコストを見てみる。太陽光パネルコストは寸法と品質で異なるが、総じてコストは過去数年で70%低下した。下図は英国での4kWパネル価格の推移である。この価格変動は残念ながら国内の価格に結びついていない。つまり日本固有のコスト高の理由がどこかに存在することになる。4kWシステム価格は日本円で85.2-113.6万円となるのでkWあたり21.3-28.4万円。国内の4kWパネル価格114-140万円はkWあたり28.5-35万円は3割以上も高い。

 

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Source: theecoexperts.co.uk

 

上の図からパネルのコストが収束し飽和したように読み取れるが、パネルの効率が上がれば発電量も増大するのでより高効率のパネルが市場に出れば設置者も増えて増産されコスト低下に結びつく。では発電効率はパネルの材質とどのような関係にあり推移はどうなっているのだろうか。

下にパネル材料ごとのエネルギー変換効率の推移を示した。新材料(有機材料、ペロブスカイト)は以外は最新データがないが、他材料の伸びは飽和に近い。注目すべきはペロブスカイトと材料の効率の急激な伸びですでに、全材料中で最高のエネルギー効率に達している。

 

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Source: huffingtonpost

太陽光発電の割合は今後20年で全エネルギー需要の過半数を締めるというのは米国の予測である。2015年度の米国の発電量の67%は火力発電である。100基以上の原子炉を所有する原子力大国としては意外な数字で、原子炉のほとんどが停止状態の日本の2014年度の87.7%に及ばないが、化石燃料に依存している点では同類なのである。

 

太陽光発電を本命と見る米国

米国はシェールオイル・ガスの増産で国内の化石燃料コストが下がり続けているにも関わらず、火力主体の電源割合を変えようとしている。その背景には太陽光パネルのコスト低下とエネルギー変換効率の急展開に活路を見出したためである。

特にペロブスカイト材料の効率の改善は顕著である。これまでの主流のシリコンの効率が14-18%で、2015年の電源割合は0.4%であるが、今後世界的には30%、米国では25-50%の成長が期待される。それを支える材料がペロブスカイトと目されている。

ペロブスカイト材料は1986年の高温超伝導体の発見以来、注目されるようになった。典型的な誘電体材料であるチタン酸バリウム(BaTiO3)をはじめ遷移金属酸化物に多く見られるペロブスカイトは中心金属を囲む酸素原子八面体が積み重なった結晶構造で、ドーピングによって絶縁体から金属まで広範囲の物性を制御できる電子材料でもある。

太陽光発電材料としての優れた特性(効率)は注目を集めるところとなりNEDOも革新的新構造太陽電池の研究開発で取り上げ、パネル(モジュール)の変換効率20%、コスト15円/Wを目指したプロジェクトを推進している。

日本国内では福島事故の賠償、廃炉、除染コスト見積ができないため、上乗せされる電力料金の見通しが立っていない。それでも新エネルギーには旧来の基幹電源発電コスト7円/kWhとの競争条件が課される。

 

ペロヴスカイトの将来性

NEDOは効率向上と製造コスト両面の提言努力で2020年に業務用電力価格14円/kWh、2030年に基幹電源発電コスト7円/kWhをクリアする計画でいるペロヴスカイト系以外にも色素増感材料を含む有機系の開発を含めた「低炭素社会に資する有機系太陽電池の研究開発」で有機金属ハライドペロヴスカイト(J. Phys. Chem. Lett. 4 4213 (2013)の研究開発も推進している。

米国はタンデム構造を使うことでペロヴスカイト材料の変換効率が最大32%となること、およびオン・シリコンのタンデムセルで44%を目指し、新材料で発電コストで火力に対しても優位に立てると考えている。

 

国内でもペロヴスカイト材料の発電コストは7円/kWhとなり材料コストがシリコンの1/5となると期待される。非シリコン系でペロヴスカイト材料の変換効率トップは東大グループの21.5%(Nature Comm. 6 8834 (2015))。しかし現在潤沢な化石燃料供給体制に惑わされず、将来性を見切って新材料の可能性にかけた米国の決断はさすがである。勝算があると判断した上での政策転換なのだろう。そう考えるとEVの好調な販売も背景にある太陽光発電コスト低下の見込みに対応した社会の流れとして理解できる。

世界の新エネルギー転換のモメンタムを感じルことができずにいる日本だが、そろそろ変化の兆しに気づいて研究開発予算を集中し技術を生かして遅れを取り戻せないのだろうか。少なくともベース電源に根拠を置いて原子力に頼る時代遅れのの電源割合を変革すべき時代を迎えようとしている。

なおNEDOの高温超伝導プロジェクト時代には文部省、科学技術庁も独立に、それまでない潤沢な予算をつけた。日本は高温超伝導の研究開発でペロヴスカイト薄膜の製造技術が進歩したと言える。そのアドバンテジを生かして太陽光パネルの高品位化で世界市場へ進出する日はいつになるのか楽しみである。

 

 

 

 

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