放射線耐性が従来の100倍の新金属材料

原子炉、核融合炉やロケット、人工衛星、宇宙船などには耐放射線材料が要求される。放射線照射により欠陥が生じるため、強度が低下するため、耐放射線強度を高めた新材料の開発が待たれていた。ミシガン大学、テネシー大学、ウイスコンシン大学の共同研究チームはこのほど3元以上の合金が放射線耐性(放射線照射による膨潤特性)を飛躍的に向上させられることを発見した(Nature Commun. Condensed Matter Dec. 16 2016)。

 

原子炉圧力容器などの高温下で強い放射線を照射される環境下では金属が膨潤して体積が倍にも達することさえある。膨潤すると機械的強度が低下したり他の部分との整合が悪く容器破損につながる。

この膨潤現象は金属原子が放射線で励起され結晶格子位置から飛び出して、格子間を動き回ることよる。金属原子の移動によってできた格子欠陥は移動度が低いので局所的に欠陥が集積すると、マクロ的な空洞となり機械的強度を著しく低下させる。下の写真は放射線照射で膨潤した金属材料。

 

62b215eedf25494ad2bee84160b4919c

Credit: Geek magazine

空洞の形成を抑えて膨潤を防ぐために最近の研究ではマイクロシンクあるいはナノシンクと呼ばれる欠陥を吸収する領域を作る工夫が行われている。テネシー大学チームはこのような考え方でなく、結晶構造を強固にして原子が格子位置に止まるようにしたことで耐放射線強度を飛躍的に向上することに成功した。

新型合金の組成はNi-Co-FeとNi-Co-Fe-Crの均等配分合金である。耐放射線の試験は500Cで原子炉容器の数年分に相当する放射線量の環境で行われた。また計算機シミュレーションを用い格子位置からはじき出された原子の移動を解析した。さらにウイスコンシン大学チームは研究結果を独立の実験で検証した。

 

その結果、この合金では格子位置から飛び出した原子が、サイズの事なる原子間を移動できず、空格子近傍にとどまるため、欠陥ペアが修復されて元に戻るので構造を乱さないことがわかった。

下の写真は組成の異なる合金に放射線を照射してできた空洞の電子顕微鏡イメージ。NiCoFeとNiCoFeCrMnの空洞密度は100分の1に減少している。

 

towardsaferl

Credit: University of Michigan

 

この研究とは別にSUS304Lの耐放射線強度(膨潤特性)をナノ構造で炭素化物が析出しないようにして1桁高めたという研究結果がある(Scientific Reports 5 7801 (2015). 

 フランスでは10基の原子炉の容器の安全性が問題となり停止したため電力不足に陥っている。また新規建設の遅れの理由の一つは原子炉容器の材料の欠陥による安全性による。新型合金で容器の耐放射線強度が高まれば安全性の改良に寄与すると期待されている。

 

これらの研究で中心になるのは米国大学の中国人研究者である。ナノ科学に置ける最近の中国人研究者の躍進についてはすでに書いているが、米国のナノ材料科学でも中国人研究者がリーダーシップを発揮しているようだ。中国の科学系大学教官は2年の国外研究履歴が求められるという。多くの優秀な人材が欧米に渡って研究の腕を磨き戻って教官となり、次の世代を育成する。かつて盛んだった日本への留学生の数は減少している(注1)。日本で学ぶものが無くなったと彼らが感じているのなら深刻な問題だ。

(注1)上位にある中国の大学の学生の能力は向上している。文科省のさくらプログラムでインターンシップを支援しているが、日本の大学の先生たちは昔のイメージのまま技術を盗まれるのではないかと受け入れに尻込みするが、教えるどころか彼らは任せられるスキルを身につけている。この記事のような中国人研究者が欧米と頻繁に行き来して学生たちに先端科学技術を教え込んでいるからである。

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.