コンパクト核融合炉の進展

福島第一原発の廃炉・賠償費用の再評価が21.4兆円に膨れ上がり、国民負担が避けられなくなった。それでも経済産業省は40年間で徴収するとした時の発電コストが他の発電より低いと主張する。将来の原子力の問題はここに含まれていないバックエンド(使用済み核燃料の保管・処理)にあることは自明である。バックエンドを含めての発電コストがどうなるのかは、触れられることはない。

 

一方、核分裂に代わるエネルギー源として核融合への期待が高まっている。もちろん核融合にもプラズマ容器の損傷や安定な燃料供給の問題など、不安な要素も多く現実は厳しい面が少なくない。それでも2016年にはいくつか興味ある核融合研究の進展があった。ITERの実験は2040年代に予定されているが表銃的な大型原子炉のしゅつりょくに匹敵する1000MW=1GWクラスの発電が実用化するのはさらに先である。一方、ITERの建設が開始されても各国のコンパクト・トカマク核融合炉の開発は予算的に圧迫されながらも継続され、超伝導磁石の利用とスパコンのプラズマ閉じ込めシミュレーションにより着実な進展を見せた。ここではコンパクト核融合炉の進展について簡単に紹介する。

 

非トカマク型核融合炉の進展〜Wendelstein 7-X (W7-X)

世界の様々な型式の核融合炉の中でITERが採用するトカマク型が最も実用炉に近いとされるが、最近の研究では非トカマク炉やコンパクト・トカマク炉で超伝導磁石の利用とスパコンによる精密な磁場シミュレーションで、従来の性能を打ち破る高性能が得られるようになった。

W7-Xはマックスプランク・プラズマ物理研究所が2014年に完成したステラレータ型核融合炉である。ステラレータ型核融合炉というのは聞きなれない人が多いかもしれないが、ヘリカル型と呼ばれるトーラス型の磁場閉じ込め型の一種で外側のコイルをひねって複雑な閉じ込め磁場となっている。日本の核融合研究所には世界最大のヘリカル型核融合炉が設置されている。

W7-Xは2015年に最初のプラズマが導入される予定で、完成すればW7-Xは世界最大のステラレータ型プラズマ閉じ込め装置となる。トカマク方式はプラズマ温度を高くできる一方で、外壁とプラズマの相互作用が大きく磁石のクエンチを引き起こすなどの問題もある。ステラレータ型はプラズマが外壁と接しないためトカマク特有の技術的問題はない。

 

image-1 copy

Credit: マックスプランク・プラズマ物理研究所

W7-Xの特徴はプラズマ容器の外側に配置された多数の超伝導磁石にある。形状はスパコンのプラズマ解析に基づいて設計された。最近の実験で当初の性能が確認されている。

 

コンパクト・トカマク核融合炉の進展〜MIT

2016年9月30日にMITのコンパクト・トカマク融合炉が核融合の実現の鍵となるプラズマ圧力が世界で初めて2気圧を超えた。MITのトカマク炉は5.7Tの磁場中で3500万度の高温プラズマの圧力が、世界最高の2気圧を記録した。プラズマ体積は1立方m、持続時間は2秒であった。

他の研究機関のトカマク炉では1気圧のプラズマである。遅れてITERに参加した米国は2012年に財源難からMITトカマク予算を削除したが議会が3年間の延長予算をつけ、その期限となる9月て30日に成果を出したことになる

MITトカマクは他の研究機関に比べ小型でITERの1/800スケールであるが、民間企業でも100MWクラスの実用炉を目指すコンパクト核融合炉の開発が積極的に行われている。

 

image copy copy copy copy

Credit: MIT

 

コンパクト・トカマク核融合炉の進展〜KSTAR

韓国のトカマク型核融合炉KSTAR(Korean Superconducting Tokamak Advanced Reactor)がプラズマ閉じ込め時間の最長世界記録(70秒)を達成した。KSTARは1995年から建設を開始し2007年に完成した。超伝導電磁石を用いたKSTARは直径8.6m、高さ8.6mのコンパクトトカマク型で最初の実験を2009年に開始した。

KSTARではトロイダル型の高温プラズマ温度が3億度に達する。フランスのToreSupraトカマク炉はより低温のプラズマを5分以上閉じ込めることに成功しているが、KSTARはこれより高品位のプラズマを1分以上閉じ込めることに成功し、世界の核融合実験の先端グループに加わった。

 

トカマクの大型化メリットに疑問符

国際プロジェクトとして世界最大のトカマク型核融合炉ITER(http://www.fusion.qst.go.jp/ITER/index.php)が現在、フランスに建設中である。ITERはトカマク型でプラズマ体積840m3の世界最大のトカマク炉で最もも実用炉に近いとされている。その戦略であるトカマック型のスケールメリットが存在しないというショッキングな研究結果が発表され話題になっている。この研究結果によればコンパクト・トカマク炉にも実用的な核融合炉の研究開発が可能だということになり、大型装置の建設が必須だという従来の概念が意味を失いかねない。

またITERは発生エネルギーと入力エネルギー(電力)の比(Q値)が10倍を超え、発生した高温プラズマが維持できることや、熱出力500-700MWを目標としている。いかにもこれで実用炉への道が開ける印象だが、ITERは発電機や熱交換器を備えていない原子炉で言えば実証炉のようなものである。ITER稼働以降も研究開発が続けられ、5000MWを発電する次世代機DEMOに引き継がれる。DEMOは現時点で原型炉計画作業部会が、戦略と国際協力の検討を行なっている段階である。

一方でコンパクト核融合炉の実用化を目指す企業が活発化しており、スケールメリットがないことになれば小型原子炉同様に建設コストの低い100Mクラスの小型核融合発電システムが市販される日も遠くないかもしれない。ITERの重水素—トリチウム運転開始は2027年と予定されている。ITERは日本がJT-60の実績を元に主導権をとった国際プロジェクトだが、コンパクト・トカマク、非トカマク型炉の激しい追い上げが予想される。また民間企業の開発動向にも注視する必要がある。

下の模式図はロッキードーマーテイン社が提唱するコンパクト核融合炉。超伝導電磁石でプラズマの地場でプラズマを高密度(圧力)下で閉じ込める際の圧力(β比で評価される)がI大型トカマク炉より高いのが特徴で、2017年度に実証試験が予定されている。最終的には100MW規模の小型炉を販売する。

Compact Fusion Reactor Diagram 0

Credit: Lockeed-Martin

 

現状の原子力の様々な問題を考慮すればするほど中性子線のみが発生する核融合に目を奪われがちだが、強烈な中性子線の勝者に耐えうるプラズマ容器の材料が未だに確立されていない。

 

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.