チェルノブイリの安全シェルターが石棺に移動完了

1986年のチェルノブイリ事故で(原子炉の構造や運転員の習熟度など管理面でも問題があったとはいえ)原発の安全神話が崩れたことに加えて、原子力の根幹にある使用済み核燃料の処分法が決まらないことで、各国の再生可能エネルギーへの動きを活発化した。

 

しかしメデイアには太陽電池事業の採算割れや変換効率劣化などのネガテイブな記事も多く、その背景には「やはり原子力が必要」というメッセージが読み取れる。福島第一の事故直後には息を潜めていた再稼働議論も復活し、核燃料サイクルの全体像が見えない中で「もんじゅ」廃炉が高速炉開発に置き換えられようとしている。「熱しやすく冷めやすい」と揶揄される日本だがチェルノブイリや福島の教訓はどのように活かされているのだろうか。

原子力の立ち位置を巡って混乱は早期に決着がつきそうにない中でチェルノブイリから安全シェルターの移動が完了したという進展のニュースが飛び込んできたので以下に簡単に紹介する。 

 

チェルノブイリ安全シェルター

1986年の悲惨な事故の後に建物には応急でカバーがかけられ、むき出しになった溶融核燃料部分は石棺で封印された。石棺の老朽化(注1)のため再び放射性物質が周囲に飛散する危険性が生じた。そのため石棺を含む建物全体を覆う安全シェルターが建設されているが、2016年11月29日に所定位置に移動し建物がシェルターで覆われた。

(注1)石棺の建設がロボットによるもので、通常の建設基準が満たされなかったため、老朽化(風化)が激しく崩壊の危険性が高くなった。

 

チェルノブイリシェルター基金が建設する安全シェルターには二つの目的がある。まず周囲への放射性物質の拡散を防ぐことであるが、(シェルター内部で)石棺を崩して廃炉作業を行うための「閉じ込め」の目的もある。安全シェルターの寿命は廃炉作業の工程を考えて100年とされている。

この安全シェルターはフランスのコンソーシアムとロシアとの共同プロジェクトで総建設費(約2,580億円)は欧州の民間融資(注2)によるものであるが、建設費が高騰し完成が危ぶまれていた。

(注2)European Bank Reconstruction and Development (EBRD)

設計にはウクライナ政府の要請を受けた英国の設計チームがアーチ型の屋根を持つ蒲鉾状の建物となるデザインで国際コンペを勝ち抜き、2007年にフランスのコンソーシアムとロシアの共同プロジェクトとして世界最大規模の移動式シェルターの建設が始まった。建設コストが高騰したのに順調に建設が進んだ理由の一つは原子炉本体と異なり、鉄骨に外板を貼り付けた簡単な構造であったためと思われるが、大規模建築物でスケジュール通りだというのも最近では珍しい。

 

nuevo-sarcofago-Chernobyl TINVID20130213 0005 3

Credi: Nobarka

 

安全シェルター完成予定は2017年となるが、シェルター本体は2016年11月14日に石棺に向けて移動を開始、29日に移動を完了した。今後壁工事追加を終えれば2017年に完成予定である。第一の目的はこの時点で達成するが、もちろんシェルター内部での石棺爆破と高レベル放射性物質の撤去は難関である。

 

福島第一廃炉

福島第一の廃炉作業では溶融核燃料の所在がつかめていないことが最大の問題だが、圧力容器が破損しているため水棺方式での廃炉作業は難しいことは容易に推察できる。おそらく東電も水棺による通常の廃炉工程では」済まないことくらいはわかっているだろう。どのような手法になるにせよ、廃炉作業が本丸(格納容器)に及び、デブリ収容が本格化するときキャンパスや周辺地域への影響を最小にするための安全シェルターは検討に値するのではないか。

福島第一でも同様のシェルターが検討されたがコスト面で見送られたという。しかし格納容器の中に手が入り廃炉作業が本格化するときに放射性物質が漏れ出しても手遅れだ。またチェルノブイリ安全シェルター の鉄骨は強度が高く廃炉作業の重機(クレーン、ロボット)を支えられる。

 

福島原発の廃炉・賠償費用の見積もりが倍増し20兆円を越すことがわかった。電力料金への上乗せで国民負担が避けられない。廃炉費用(技術的なコスト)と賠償(東電の補償責任)が一緒に議論されるのか理解に苦しむのは筆者だけだろうか。

チェルノブイリでは当初からシェルター基金が作られ、民間融資で当面の建設コストを賄うことになった。財政難のウクライナの融資返済をどうするかは不透明だが、民間融資なら監査が厳しいので無駄は許されない。また技術面でも世界の頭脳を総動員する体制、特に国際コンペ、に門戸を開くべきではないだろうか。チェルノブイリ安全シェルターから学ぶべきことは多い。

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.