携帯端末バッテリーに救世主〜フレキシブル・スーパーキャパシタ

スマホの最大の弱点は長持ちしないバッテリーにある。小型軽量化にリチウムイオンバッテリーの果たした役割は大きいが、画像表示、演算速度やメモリと高性能化・大容量化でバッテリーの性能アップも相殺され、バッテリーチャージに気を使わなければならない。また一部の機種ではバッテリーの発熱が発火事故をもたらすこともあり、新しいバッテリー開発研究が活発化している。

 

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Credit: University of Central Florida

 

米国の大学(中部フロリダ大)の研究チームが3万回にわたる充放電で劣化しないフレキシブルなスーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)を開発した。この蓄電デバイスは携帯端末の弱点(バッテリー問題)を解決して新たなステージへ発展させる技術として期待される。

スーパーキャパシタは化学反応電池と異なりイオンが移動するだけのキャパシタなので、充電に要する時間が短い。数秒で充電が完了すれば外出前に充電して出かけることができるし、購入してから徐々に劣化するバッテリーで使用できる時間が短くなって行く問題からも解放されることになる。せっかくモバイル機器が小型・軽量担ってもユーザーはバッテリーチャージャー(多くの場合はそのバックアップも)を持ち歩く必要があり、メリットが活かされない。

 

リチウムイオンバッテリーを置き換えるほど高性能の新型キャパシタの開発はナノ科学技術によるところが大きい。まずキャパシタの蓄電容量(エネルギー密度)はリチウムイオンバッテリーよりはるかに小さいため、これまでの技術で同じ容量を実現するには大型のものになる。

研究グループは数原子層厚のWS22次元層(注1)で電極となるWO3ナノワイヤーを被覆することにより、高エネルギー密度と急速な充放電を可能にした(ACS Nano 2016 October 12)。新開発のスーパーキャパシタの構造を下の模式図に示した。

 

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Credit: ACS Nano 2016 October 12

(注1)究極的な1原子層の2次元半導体として注目を集めるグラフェン膜をスーパーキャパシタに応用する研究は成功していない。

 

このスーパーキャパシタのエネルギー密度はリチウムイオンバッテリーを超えるもので3万回の充放電に耐える。またこのキャパシタは曲げられるため形態の自由度も大きくウエアラブル機器に適合できる。従来のバッテリーを置き換えることにより携帯端末のバッテリー問題が解決すると期待される。

製造までにはまだ時間がかかると考えられるが重要な点は携帯端末の弱点が克服されることが確実となった点である。なおこの仕事も中国人研究者が関わっている。ACS Nanoには最新のナノテク関連の論文が掲載されているが中国人研究者の占める割合が極めて高い。以前にも指摘したことだが原子層エピタキシーといった洗練された高額な製造装置と複雑なプロセスで高品質の薄膜製造に弱かった彼らが、アイデア次第で道が開けるナノ科学で成果をあげていることが背景にある。

薄膜技術のポテンシャルが高かった日本は高品位の材料開発にこだわりすぎて、泥臭い湿式でのナノ物質作製が不得意のようだ。中国人研究者のナノ科学論文の圧倒的な優位性に対抗するには、超高真空での分子線の2次元成長という殻を破る必要があるのかもしれない。しかし何より今の日本に欠けているものは、科学的興味ではないか。子供の頃に持った興味を持ち続けることを妨げる何かが教育の過程に組み込まれているとしたら問題は根が深い。

中国の大学では日曜日に一般市民や子供達を招いて見学会を日常的に行っている。子供達の目は輝いていている。彼らが将来の科学技術を支える研究者になっていくのだろう。

 

 

 

 

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