金製品は安全か

 真夜中、重装備された軍人達により米国ケンタッキー州のPaducah にある米軍関連工場(Paducah Gaseous Diffusion Plant)で最高機密ミッションが25年以上行われていた。1950年代初期から始められた米エネルギー省のプログラムによると、全米16カ所以上の米軍施設から、使用済みや退役された核兵器を運び出し、すべての核兵器から、金、プラチナ、銀, 銅、ニッケルなどの貴金属を取り出すための解体作業を遂行し、その後のスクラップは地下に埋めるというものであった。米国の確保有数は10,500個(Bulletin of the Atomic Scientists and National Resources Defense Council)とされているが、これは廃棄された後の個数で、1980年中ごろには米ソ合わせて68,000個(Natural Resources Defense Council)とされているので、数万個の核が廃棄されたことになる。


 核兵器は米国で冷戦終息まで生産され続けられていた。核兵器製造には多くの貴金属が使われる。特に、核兵器の核弾頭の中にある、プロトニウム・コアや電子配線回路の表面に、耐久性とさび防止効果の性質を持つ金が使われていた。その金を溶融して取り出し、集められた金は溶解され、40オンス地金に鋳造され、再生地金として金市場で売却された。年2回、年間1,100オンス(0.035トン)の地金が売却された。ちなみに、1950年から1980年までの世界金供給量は1000トンから1500トンであった。歴史的、再生地金市場規模は全体の30~40%である。25年間で0.85トンが金市場に放出された。金の使用製品の範囲を考えると決して、無視できる量ではない。

 

Paducah enrichment plant


 では、なぜこの地金再生プログラムは最高機密ミッションであったのか。実は、1999年に工場に勤める放射能安全技師による告白と米国政府に対する訴訟がなければ、この事実は機密のままであった。訴訟によると、取り出された貴金属は放射能検査を受けず、貴金属市場に放出されたのである。米国では、放射能汚染された貴金属に対する安全基準や規制がなかったため、汚染された貴金属が市場に放出されたのである。


 工場施設の放射能検査の結果、金インゴット金型に残されていた金は500millirems per hour(一般的に人間は年間200から300 milliremsの放射能を浴びている)を放射していたことが判明された。(”Gold May Have Too Much Glow”, Joby Warrick, Washington Post, August 14, 1999)銅、アルミ、ニッケルなどの貴金属も大半は放射汚染されたまま、再生され、さらに、プロトニウムやウランも機密に輸送されていた事が明白らかにされた。1980年以降、全米で89箇所の金属再生工場で放射能汚染が報告されている。その結果、2000年に軍事施設からの貴金属再生が法律上禁止となった。

 問題は、2000年以降、全米の軍事施設や政府系研究施設に放射能汚染された貴金属やスクラップが山積みになっていることである。Oak RidgeのK-25施設一カ所だけでも、2000年時点に100,000トンの放射能汚染された金属が存在している。現在、全米でおよそ167万トンが山積みになっていると推測される。その結果、今年の6月に、再び金属再生の議論が浮上、全米金属再生業界、各貴金属再生団体、消費者団体、環境団体などから猛烈な反対の声が上がった。

 

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 冷戦時代とその後の戦争、米国国家安全のためのmilitary buildup が残した遺産は大きく、地球環境や人間の存続に果てしない影響を残した。台湾で放射化した鉄骨をそのまま住宅建材に用いた事件では住民が多数深刻な被曝を受けた。独立行政法人 物質・材料研究機構の調査によると、日本の都市鉱山に 存在する金の総量は6,800トンで、これは全世界の現有埋蔵量の約16%にあたる。ほとんどが携帯電話などの工業製品であるが、再生金利用に放射線の検査が必要になるかもしれない。

 

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