米国債にまつわる2つの謎

 米ドルが世界の基軸通貨であることに対応して、米国債のほぼ半分は世界各国の中央銀行によって保有されている。上位保有国は、中国、日本、カリビアン・バンキング・センター(ヘッジ・ファンド)、アラブ原油国、ブラジルである。ロシアは2013年末時点で11位であったが、米国債の売却により保有高が減少している。


 米国債にまつわる第1の謎はロシアの保有高の減少である。
ロシアの米国債保有高は2013年12月31日時点、 1,360億ドルであった。その内、米国連邦準備銀行(FED)に預けている額が、1,000億ドル以上と推定される。その全額が3月14日付けには、回収され, 米国外に移されたのである。(US Treasury Department, US Treasury International Capital Dataによる)なぜ、この時期に?またその目的は?という疑問が生じる。写真はワシントンDCにあるFRBの本部、The Eccles Buildingである。

 

Marriner S. Eccles Federal Reserve Board Building



 政治的理由以外に、各国の中央銀行は、その国が保有する米国債をFEDに預けることで、ドル立て資産を民間の銀行より簡単に、また低い手数料で売り買いすることができるメリットがある。

 ところで国債以外に各国が保有する金も、同様にFEDに預けられているが、これに関連して近年騒動が起きている。保有する金の送還を要求する国に対して, FEDは返還しない(返還できない?)のである。その中で、ヨーロッパの重要な同盟国であるドイツの話が注目されている。ドイツは冷戦中、ソ連の占領を恐れ、国が保有する金の半分である1,536メトリック・トンをヨーロッパから遠く離れた、ニューヨークにあるFEDに保管を依頼した。2012年にその金の返還を願いでたが、米国に最初は断られ、ドイツ国民を巻き込んだ騒動になった。その後、7年間かけ返還することで決着がついたが、返還の初年度である2013年には、わずか5トンしか返還されなかった。(この話の真相は別の機会に取り上げる。)

 話を米国債に戻すと、ロシアの動きはFEDが保管している外国中央銀行の米国債保有高の過去最大の減少額となるが現時点で、ロシア保有の米国債の行方は分からないとされる。市場では、ウクライナ危機をめぐり、米欧の制裁の影響で急落する自国通貨ルーブルを下支えするために、売却するのではないかとの見方があった。しかし、米国債を売却したら、市場で相当の影響がでるはずだが、米国債の利回りには、大きな影響は出ていない。つまり、米国債は保有されており、米国外のどこかが保管していることである。

 これは何を意味しているのであろうか。FEDの外国保有米国債高のデータ公表前に、プーチン大統領補佐官のSergei Glazyev は公式に米欧の制裁に対して、ロシアは米国債売却(dumping)という報復対応策の可能性を述べている。近年、ロシアと中国は、世界の基軸通貨としてのドルに疑問と不快を示してきた。この二大大国は、新しい金融秩序と新しい基軸通貨の実現に向け動いている。

 最近見た映画をふと、思い出した。それは、軍事や陰謀活動をテーマとする人気小説家のトム・クランシーの『ジャック・ライアン』である。CIA情報分析アナリストのジャック・ライアンが、アメリカの経済破綻を狙うロシア投資会社の巨大な陰謀に立ち向かうといった内容である。偶然とはいえ、このタイミングで同様なシナリオの映画がつくられていたとは?新たな経済冷戦がドルの弱体化に呼応して始まっているが、それを警告するクランシー流のメッセージなのかも知れない。彼が謎の死をとげたことは記憶に新しい。

 2つ目の謎は、ベルギーが急に米国債保有国の第3位になったことだ。保有高が2013年9月に172億ドルであったのが、2014年1月には310億ドルに拡大した。不思議なことは、ベルギーの2013年のGDPが421.7億ドルに対して、米国債保有高がGDPの実に70%にのぼることである。中国とロシアの保有高が減少している反面、ベルギーの保有高が大幅に拡大している。この時期に購入する理由と目的が謎である。ベルギーにはEUとNATO本部、世界銀行のEU本部があることが、謎を解く鍵となる。世界の経済システムが変革を遂げつつあることは確かなようである。今後の動きについて注意して見守る必要があるだろう。

 

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