EU難民とドイツの移民問題〜日本の未来図か

欧州(ドイツ)の難民問題をこのコラムで取り上げるのはピンとこないかもしれない。しかし背景には日本とドイツに共通の問題がある。戦後の復興と経済成長でドイツと日本にはよく似た軌跡をたどった。両国とも原子力利用をエネルギーミックスが1/4以上となるまで進めた点でもにている。原子力に関してはしかし福島第一の事故を契機として、ドイツは大きく再生可能エネルギーに舵を切った。そのドイツに大量のシリア難民が押し寄せており、将来は社会構造にも影響を与えるかもしれない。その根底にある問題は日本と同じだとしたら、見方も変わるのではないだろうか。

 

立ち往生するドイツを目指す難民

現在、多くのシリア難民がドイツを目指して北進を続けており、ハンガリー東駅の混乱が連日、報道されている。難民たちはシリアから6日かかりでトルコ、ギリシャを経由してハンガリー(ブダペスト)にたどり着いたが、ハンガリー政府は難民受け入れは寛容ではなかった。

ブダペストに到着した3,000人の難民は鉄道の切符を持ちドイツ行きの列車に乗ることを希望している。しかしハンガリー当局が列車に乗せない。そのため駅構内に宿泊せざるを得ない。ブダペストからベルリンに行くには、ウイーンとプラハを経由しなくてはならない。しかしハンガリーとチェコは難民の受け入れに消極的である。

メルケル首相はEU諸国が難民の受け入れを分担するようEU各国に割当制を提案、EUの建前としては分担とすることになった。しかし現実には従わない国もあらわれEUの足並みが乱れている。慎重にならざるを得ない理由は確かにある。難民の今後の予測がたたないからだ。2013年の統計ではシリア国民2千万人のうち220万人が国外に避難したが、2015年には400万人となる見込みである。ドイツは移民に寛容な政策をとってきたため2015年度は80万人の難民受け入れとなるが、将来難民予備軍を含めれば数100万人になるかもしれないからである。

 

背景にある移民問題

ここでは難民問題でメデイアではあまり報道されない背景にある移民問題に注目する。

ドイツと日本は第二次世界大戦の敗戦から奇跡的な復興を遂げ世界経済の先頭集団に躍り出た。戦争で若年層が戦死したため、戦後の復興を支えた労働人口をベビーブーマーたちが支えたが、ドイツは移民に頼った。しかし現在どちらの国も高齢化という共通の社会問題を有している。下のグラフはドイツと日本の人口ピラミッドである。どちらの国も戦後の成長(復興)を支えた層が高齢化しつつある。

 

germany-population-pyramid-2014

Graph

 

413fc9fd

 

ドイツは移民政策を採用した他、第二次戦中に国外に追放した「元国民」を迎え入れると同時に、移民とその家族を受け入れた。このためドイツの人口8,200万人のなかで移民とその子孫が1,500万人にも達した。5人に1人が移民とその子孫である。移民の出身は主に東欧と南欧である。

ポーランド、ハンガリー、ルーマニアからの移民たちはドイツが戦時中に侵攻した国々で、ドイツと関係が深かった。一方、南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)とトルコからの移民は、多くがイスラム系で、独自の宗教と文化を持ち込んだ。2012年の統計ではアメリカ(100万人)についでドイツは40万人と世界2位の「移民大国」となった。移民の多いカナダ(26万人)、オーストラリア(25万人)を引き離している。

 

急増するシリア難民

移民申請をしてから審査を待つ間は移民希望者はドイツ国内に居住を保証され食料と水、衣類も与えられる。多くは難民キャンプに収容され審査を待つが、難民の急増で反対派から排斥運動も起こり社会不安が起きている。それもそのはず2012年の難民20万人は2015年に80万人(注1)と予想されているからである。

(注1)イスラム系の難民は子供が多く家族も一緒に連れてくる。一般に大家族制で欧米に比べて出生率が高い。

歴史的にみれば若い移民の労働力はドイツの復興に役立ったが、イスラム系移民の急増は社会不安をつのらせるほど急増している。シリア難民の多くは「アラブの春」により2011年から始まるシリア内戦前は、シリアで職につき普通の生活を送っていた市民である。破壊し尽くされたシリアから家族を守り国外に避難する市民の気持ちは理解できる。自分たちの宗教や文化をキリスト圏に数100万の難民が流入すれば社会構造に大きな変化と混乱が起こる恐れがある。ハンガリーはそのことを憂慮しているが、ドイツにとっては高齢化を是正する機会でもある。高齢化を恐れる産業界にとって若い世代の難民は労働力として将来を支える原動力として歓迎したいところだ。

 

Immigration-To-Germany

Graph: SNBCHF 

 

シリア難民の多くは隣国(レバノン、ヨルダン)、トルコ、イラク、エジプトに避難した。しかしキャンプ住まいの国内避難民は400万人以上で彼らは国外へ一部が避難するため内戦をやめなければ、欧州への難民の増加は止められない。

ロシアの強い支援もあって2015年にアサド政権部隊はようやく攻勢に転じ、アメリカが援助する反政府軍との攻防は今後も続くと考えられる。しかし紛争はISや武装集団が入り乱れて複雑化している。急増する難民問題の背景には大国の代理戦争の背景がある。大国(ロシア、アメリカ)や湾岸諸国の干渉を今すぐにやめなくてはならない。

 

移民問題の背景

ドイツの難民の問題は高齢化により労働力不足でやがて移民を迎え入れる国策が議論される日本にとって、移民問題を真剣に考えるための警鐘になるのではないだろうか。労働力の減少を補うには(少子化が避けられない前提で)ふたつの選択肢がある。ひとつは生産効率を上げ集積化を進めること。もうひとつは移民に労働力を頼ることである。その両方を行うドイツは前者については、Industry4.0というIoTで生産効率化を高め、若い世代の移民を大量に受け入れて工業生産力を持続性のあるものにしようという狙いがある。

 

2015年だけで80万となる難民を移民として労働人口を補充する、というのはドイツらしいといえるかもしれないが、文化、宗教、慣習の異なる「不均一な社会」を代償として伴う。ハンガリーやスロバニア、チェコのように移民政策に反対するのか、受け入れてその場をしのぐのか、それともIndustry4.0のように生産効率を上げて持続性をみいだすのか。日本はどの道を選ぶのだろうか。

 

Industry4.0については別記事を予定している。

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.