再生可能エネルギー近未来像

 コージェネと複合エネルギー源の重要性についてはすでにかいた。原発事故以後に「再生可能エネルギー=脱原発」対「原発存続」を軸とした論争が起こってから久しい。原発停止の代替えは火力発電でまかなえている事実と再生可能エネルギーの電力買い取りが増えて規制が入るほどになったことから、いよいよ再生可能エネルギー派が勢力を増したかのようにみえる。しかし未来のエネルギー安定供給は「脱原発」という言葉で表現できるほど簡単ではない。

 

再生可能エネルギーの代償
 確かにドイツでは脱原発の方針をとった。しかしその代償として、電力料金に上乗せされた負担が産業のみならず一般家庭の家計を圧迫している。最悪の場合負のGDPとなるとする予想もある。成長率が1.5%の我が国でも電気料金の大幅値上げになれば負の成長もあり得る。これは絶対に避けなければならない。また、再生可能エネルギーの比率を原子力並みに増やしたスペインも同様に苦しみ財政難で破綻の危機にある。我が国でも原発再稼働を目前に控えた現在、福島の事故では「脱原発」に大きく揺れた民意もようやく冷静さを取り戻し、長期的展望に立ってエネルギー政策を考えることの重要性が認識されて来た。

 

 原発推進派の言い分は、「過去に放射能汚染事故を起こした原発は旧世代型で、安全性や自然災害への対策が充分とはいえなかった。その後、原発も改良され現在の最新鋭型(第3世代)は安全だ」というのものである。さらに次世代型の開発研究も進み、第4世代の登場も近い。一方ではすでに核の遺産(大量の核燃料廃棄物)が存在している事実が重くのしかかる。「脱原発」路線に舵を切っても、廃炉と核廃棄物処理という責務は気が遠くなるほどの時間スケールで続く。たとえ「脱原発」の道を選んでも作業は同じだ。下の図は日本のエネルギー源の内訳を表した図である。再生可能エネルギーの中で太陽光発電の内訳が大きい。

 

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急増するエネルギー需要
 2050年に(急増が衰えたはずの)世界の人口は90億に達し、新興国が先進国に追従する成長を遂げエネルギー需要は現在の2倍と予測されている。i) 新たなエネルギー源を確保することと、ii) エネルギーを効率良く使う、ふたつの観点で対処していかなければならない。

 地球温暖化が温室ガスだけに起因するかどうかは別にしても、温暖化で異常気象が頻発に起こり、世界各地で農作物に深刻な影響が出ている。カリフォルニアの大干ばつで地下水がなくなり農作物は大打撃を被り、南米でも水不足や逆に局地的な水害となって珈琲農園に大きな被害が出ている。あいつぐ20%を越える珈琲価格の値上げは天候不順と病気による生産量の減少による。温室ガス削減の観点から再生可能エネルギーを増やして、化石燃料に置き換えることが望ましいことはいうまでもない。

 

再生利用エネルギー
 i) の新たなエネルギー源として再生可能エネルギー源を増やすことは、温室ガスの観点からも推奨される。

再生可能エネルギーには
・ 太陽光—ソーラーパネルによる発電など
・ 太陽熱—太陽熱を集光し、熱水を作りその蒸気でタービンを回し発電するなど
・ 風力—風車による発電など
・ 地熱—高温源泉による蒸気による発電や、マグマを利用した発電など
・ 水力—貯水式ダムや水車による発電
・ 潮力—潮の満ち引きで生じる海面差を利用した発電
・ 海流—寒流・暖流など潮の流れで水車を回す発電
・ バイオマ—植物からエタノールや軽油・重油を作る
・ ヒートポンプ—エコキュートなどの大気・地熱などを利用したシステム
・ 燃料電池—水素やアルコールと大気中酸素の結合反応を電気エネルギーとして取り出す

などの項目がある。

 

Renewables Japan Status Report en

 

 これらのバランスはや地方により大きな差があるので、各方式を競争的に実証試験を繰り返し、有望な方式に絞り込む必要がある。2013年のエネルギー白書によればエネルギー供給構成は1970年代から石油依存が減少し、2010年代には40%となり代わって石炭、原子力、天然ガスで残り60%を占めるにいたった。

 

 しかし我が国のエネルギー自給率も再生可能エネルギーの利用率も低い。再生可能エネルギーの初期投資が大きいため、単純にコストを考えれば天然ガス、石炭、そして原子力に頼りたくなる。しかし環境汚染や廃炉、使用済み核燃料の処理コストを含めた原子力発電のコストの優位性は疑わしい。実際に国際的なコスト比較(下図)を参照されたい。

 

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遅れる再生可能エネルギー導入

 再生可能エネルギーのコストを比較すると、太陽光>バイオマス発電>小水力>風力>地熱発電となり、ドイツやスペインが苦戦しているように太陽光発電のコストは高い。日本では太陽光発電は国プロで長期的な支援を行なうとともに2009年から始った買取制度、2012年から固定価格買取制度の導入によって、発電量が増大した。2015年度には500万kWに迫る発電量の大半は住宅用太陽光発電である。太陽電池パネルについては別記事を参照されたい。

 風力発電の納入は遅れている。2011年までで太陽光発電の1/2程度の255万kWにすぎず、水力発電はさらに低い200万kWである。地熱発電は火山国の優位性にも関わらず53万kW(全体の0.2%の寄与)にとどまる。しかし水力は、潮流発電や河川の小水力発電が見直され、地熱は買取制度の優遇で発展が期待できる。

 

 家庭用の新エネルギー源は何だろうか。クリーンコールはコストの安い石炭を環境負荷の少ない利用法であるが、家庭向きではない。一方、同じくコストにこだわれば天然ガスの利用が現実的である。都市ガスを燃料とした燃料電池発電システムがエネファーム(家庭用燃料電池コージェネレーションシステム)である。下の図は燃料別発電の内訳の経緯を示した図である。

 

Japan Primary Energy Transition

 

 天然ガスから水素を取り出して空気中の酸素と反応させ水をつくることで、発電を行ない廃熱を利用することで家庭用で1kW発電、排熱出力1kWが得られる。家庭で使用される電力の約半分の電力をまかなえるが、残りを太陽光発電で補うとすれば250Wパネル4枚でエネファームと合わせて合計2kW発電能力が(日中は)確保できる。

 また10kWパネルを屋根に取り付けた戸建て住宅用が人気を集めている。エネファームと小型太陽光発電を組み合わせるか、10kWパネルで太陽光発電の売電が現実的になって来た。10kWパネルでは最大売電3万円/月となるので一般的な家庭の需要は満たすことができる。太陽光と風力発電の導入経緯は下の図に示すように堅調な伸びをみせて来たが、最近は後発国に逆転されている。

 

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 水素社会は温室ガス排出がないクリーンエネルギーであることが強調されるが、燃料である水素を天然ガス(メタン)と水蒸気から抽出する際に、温度を上げる必要があるために熱源がいることにも注意しなくてはならない。この熱源として第4世代の超高温原子炉を熱源に使い水素供給基地を原子炉に隣接して設置する構想がある。

 

エネルギー近未来像

 まとめると①再生可能エネルギー、②天然ガスのクリーンエネルギー化(燃料電池)、③旧式原子炉廃炉と核廃棄物の処理が課題となると考えられるが、③の代替えに新世代原子炉を選ぶのか、これも含めて原子力からの脱却をはかるのか、重要な分岐点を迎えようとしている。ただしその決断に関わらず、③はこれからも継続していかねばならない。311から4年になる現在も復興はままならず、汚染土壌や汚染水はたまる一方、最も重要な仮設住宅も先がみえない。これらの費用ももちろん③に含まれる。

 そうなると家庭の電気料金への負担増大が予想される。また先の長い③には専門家の育成が重要な課題となっている。若い世代が率先してこの分野に関わるためには、情報公開を徹底することが前提となるだろう。電力会社も「隠匿体質」を改めないと命取りになることを、そろそろ認識すべきだ。また電力料金への上乗せで乗り切れる金額ではない廃炉の費用をどう処理するのかが問われている。

 それとも破綻させて国の管理下とするのか、信頼できる情報を公開すべき時が来ている。また天然ガスをロシアからパイプラインを引いて安価に輸入することや、燃料電池(下の図)の水素供給の熱源としての超高温原子炉も視野にいれるべきかも知れない。いずれにしても科学技術の果たすべき役割はより一層大きくなったことだけは確かだ。

 

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