中国が世界の科学を牽引する日〜宇宙科学から加速器科学まで

中国が科学技術立国を目指している。それもほとんど全ての分野で挑戦的なプロジェクトを開始している。地球上の資源という資源に目をつけ支配力を伸ばしてきた中国だが一部の科学分野では他国の研究者にも門戸を開き、閉ざされた国のイメージを払拭するかのようである。

 

給与の80%がプロジェクト予算から

筆者が中国科学アカデミーの研究者に聞いた話では、中国の科学者の給与は所属する研究所から出る部分が一定ではなく、競争の激しい分野ではプロジェクト予算(すなわち期間限定)から最大80%、残りが固定給だと言っていた。ちなみに同席した大学の研究者は大学ではそれほど高くなく、20-30%だと言っていた。どうやら科学アカデミーに属する数100の研究所では、給与のほとんどを担うプロジェクト予算を必死で取りに行く理由は給与体系にあるらしい。

日本でも財団の大型プロジェクトになると、給与も自由度が増えるのと似ている。また科学アカデミーで設備整備予算を獲得するのには完成した時点で世界の先端に立つことが条件であるという。日本ではスパコン性能が世界一となることが疑問視された時期があったが、中国のスパコンが世界一位になったのは予算獲得時にそうなることを条件にしていたためだ。

 

世界最大の電波望遠鏡ーFAST

中国は行き過ぎた株や不動産投資を反省したためか、技術立国を目指して積極的な投資を行っている。特に宇宙開発、原子力、加速器などの分野で大規模な予算が付けられている。

宇宙開発では友人月探査や単独での宇宙ステーションの開発など、かつてのNASAを彷彿とさせる勢いである。宇宙観測にも力を入れており、このほどFAST(注1)と呼ばれる世界最大となる直径500mの電波望遠鏡を完成した。望遠鏡の口径が大きいほどより遠方の天体を観測することができる。FASTの目的は地球外生命体の調査とされている。

(注1)Five hundred meter Aperture Sphere Telescope

これまでの世界最大の電波望遠鏡は放物面鏡ではロシアの直径600mのもので、球面反射鏡ではプエルトリコのアレシボ天文台(直径305m)である。人口が少ない中国西南地区の高原地区に建設されたFASTは中国科学アカデミーが建設した。先に書いたように世界最大の電波望遠鏡を建設し地球から最も離れた天体が観測できることは予算の獲得に必要不可欠であったに違いない。

 

China-FAST-Aperture-Spherical-Telescope

Source: inhabitat

 

FASTは遠方の天体を観測できるため、宇宙の起源に関する研究に成果を期待される。地球外生命体の探査というのは予算獲得のためには説得力があったであろうが、天体科学者の多くは宇宙の起源(ダークマター)の謎を解明することが中心課題だったのだろうが、一般受けする話題性をもたせたことは成功だったようだ。自然の地形を利用して建設された球面のFASTの建設費は1億8千万ドル(日本円にして約216億円)だったという。

FASTの建設には5年を要した。球面鏡の最後の部分が組み込まれて、全体が完成し9月から評価運転が始まる。FASTの周囲は人口密度が低く、望遠鏡への磁気的騒音は極めて低いレベルである。FAST以外でも力を入れているヒッグスボソンを詳しく調べるスーパーコライダー建設が2020年から開始される。

 

china-fast-telescope-structure

Source: bit rebels

 

科学技術立国を目指す中国

国外のセールスで失敗を重ねている高速鉄道は世界の先進技術の組み合わせであるが原子力や宇宙開発においてもキャッチアップが早く、大型予算を獲得している裏には研究者のインセンテイブや給与体系が背景にあるようだ。中国では(日本には馴染まない)米国流の競争社会がスケールアップしてアカデミアにおいて実現されていることに驚く。

中国人研究者の海外留学先はMITが人気だったが最近ではミシガン大、ウイスコンシン大など中西部の大学やノースキャロライナ大学など東海岸、スタンフォード大、カリフォルニア大バークレイ校などが人気であるという。裕福な家庭でなくとも米国大学の奨学金を受け、恵まれた環境で米国の研究室に学んだ中国人は帰国して競争資金で本家を超える設備を次々に作り出している。そこには高速鉄道のイメージはない。

 

 

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